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13.終わりに恋をするようです

2 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:31:59 ID:nDuBn9DQO
年下の幼なじみの様子がおかしい事には気付いていた。
いつもみたいに二人で木登りをして川で水遊びをして笑っていたけれど、何だか少し悲しそうだったから。
でもまさかそんな事になっていたなんて。

「ばいばいさ、フサ」

泣きそうな笑顔に手を振り返す事も出来なかった。


3 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:33:12 ID:nDuBn9DQO



終わりに恋をするようです


4 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:33:44 ID:nDuBn9DQO
大きくも小さくもないこの国、ニューソクはとても豊かだ。
目立った特産物が有る訳でも無く、鉱山資源が豊かな訳でも無い。
それなのにこれだけの発展ぶりを見せているのは、一重にこの国が『神の降りる国』と呼ばれる故だった。

( ´_ゝ`)「神子様のお通りだ!」

「何てお綺麗な方だろう」('A`)

( ・∀・)「流石神子様となられる方は品が違う」

民衆が割れて道を作り、その出来た道を輿に担がれて神子が通る。
真っ白なな絹の衣装に真っ白なベールを被る神の花嫁。
清らかな空気を纏う彼女を誰もが祝福する。

「気持ち悪い」

ボソリと呟いて彼は帽子を深く被り直した。


5 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:33:57 ID:nDuBn9DQO
─────
神子を乗せた輿は近衛兵と共に街をぐるりと練り歩き、神殿に帰る。
神殿の最奥にある自分の部屋で神子はベールを脱いで、思い切り伸びをした。

(*-∀-)「んー、今日も疲れたさー」

ζ(゚ー゚*ζ「ご苦労様です。でもまた直ぐスギウラ様がいらっしゃいますから、着替えはちょっと待って下さいね」

(*-∀-)「うぇーい」

侍女の言葉に神子はソファーにぐったりもたれかかって、気の抜けた返事を返す。
とても先程の神子様と同じ姿とは思えないのんべんだらりとした姿に侍女はくすりと笑った。

(*゚∀゚)「どしたー?」

ζ(゚ー゚*ζ「何でもありませんわツー様」

(*゚∀゚)「そーかー」

侍女のデレに釣られてツーもへにゃりと笑う。
外で神子として振る舞わねばならない分、此処で過ごす時は素の表情で居る事にしている。
でないと頭がおかしくなりそうだった。


6 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:34:16 ID:nDuBn9DQO
コンコン

ζ(゚ー゚*ζ「どなたでしょう?」

「スギウラである。神子様は居られるかな?」

ノックの音と渋い重低音。
ツーがベールを被ったのを確認してからデレはドアを開ける。

( ФωФ)「失礼する神子殿。お疲れの所を申し訳ない」

姿を覗かせたのは見るも厳つい大男。
大神官の衣装を纏う威厳に満ち溢れた男は、他者を圧倒する風格を持っていた。
昔はこの恐ろしさによく怯えていたものだと懐かしみながらツーは笑みを浮かべる。


7 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:34:41 ID:nDuBn9DQO
(* ー )「スギウラ様こそお忙しい中ようこそおいで下さいました。お茶を入れます故どうぞ中へお入り下さい」

( ФωФ)「ああいや、直ぐに帰ります故お気遣い無く。今日は新しい近衛を連れて来ただけなのです。
さあご挨拶を」

(* ー )「まぁそれはそれは、」

(* ∀ )そ

スギウラが脇に避け、後ろに控えていた近衛兵の姿を見てツーは絶句した。
焦げ茶色のくせっ毛にスッと通った鼻、少し釣った鳶色の目。
見違える程逞しくはなった、けれど自信を持って彼だと言える。


8 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:35:09 ID:nDuBn9DQO
ミ,,゚Д゚彡「フッサール・リテントと申します」

あの日別れたきり一度も会えなかった幼なじみがそこに立っていた。
一緒に走り回った日々を思い出し、胸が熱くなる。
ああ、泣きそうだ。

( ФωФ)「どうかなさいましたかな?」

(* ∀ )「っ」

スギウラに声を掛けられ、はたと我に帰る。
いけない、今はまだ人前だ。
慌てて神子様として取り繕う。

(* ー )「何でもありませんわ。随分若い方だなとつい驚いてしまって」

( ФωФ)「ああなるほど。ですが腕の方は確かです故ご安心を。負けたとは言え近衛隊長に一太刀浴びせた程の男です」

(* ー )「まぁあの歯車王殿に? 国一番の騎士と名高い方ですのに、素晴らしい剣の使い手でいらっしゃるのね」

ミ,,゚Д゚彡「有り難きお言葉嬉しく思います。ですがあれはたまたま運が良かっただけの事。これからも鍛練を積み神子様の為にこの身を投げ打つ所存であります」

どうやら上手くごまかせたらしい。
ツーはホッと胸を撫で下ろす。


9 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:35:24 ID:nDuBn9DQO
それにしても懐かしの幼なじみは今ひとつ反応が薄い。
ツーを見る目も言葉も機械的で、もう少し何か有ったって良いだろう。
自分はこんなにも会いたかったのに、とツーはこっそり心の中で愚痴る。
此処にはデレもスギウラも居るから仕方が無い事なのかもしれないけれど。

(* ー )「リテント殿」

ミ,,゚Д゚彡「リテントと、お呼び捨て下さい神子様」

(* ー )「ではリテント。来るべき日まで後一年あまり、これからよろしくお願いしますね」

ミ,,゚Д゚彡「我が命に替えましても。全てからお守りさせて頂きます」

フッサールは儀礼に則り恭しくお辞儀をした。


10 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:35:42 ID:nDuBn9DQO
─────

(*-∀-)「あー、うー」

誰も居ない部屋でごろんごろんとベッドの上を転がるツー。
先程使いに出したデレの帰りを、今か今かと待ち望む。

(*゚∀゚)『人前で駄目なら手紙が有るじゃない』

とフッサール宛てに手紙を書いたのだ。
神殿の宣托を受け神子としてこの首都へ連れて来られてからの生活、自分がどれだけフッサールに会いたかったか。
その間フッサールはどうして過ごしていたのか、フッサールの両親は元気か、どうして近衛になったのか。
伝えたい事も聞きたい事も有りすぎて、出来るだけ抑えて書いたのにそれでも便箋五枚にもなってしまった。

(*-∀-)「にゅふふー」

どんな返事を返してくれるだろう。
そう考えただけでつい頬が緩みっぱなしになってしまう。


11 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:35:54 ID:nDuBn9DQO
コンコン

「神子様」

デレの声だ。
ベッドから跳ねるように起きてドアを開ける。

(*゚∀゚)「ありがとう早かったさねフサは何て言ってた返事はいつくれるって?」

ζ(゚─゚ζ「……」

(*-∀-)「ああごめん一気に話しすぎたさ」

つい言い募ってしまって反省する。
早く早くフッサールの言葉が聞きたくて興奮してしまった。
とにかく落ち着こうとデレを部屋に入れて二つのカップに水差しから水を注ぐ。

(*゚∀゚)「さあさ座って座って話を聞かせるっさ」


12 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:39:54 ID:nDuBn9DQO
自分も座って促すが、デレは立ちっぱなしでさっぱり座る気配が無い。
何だか顔色も悪いようだし口は真一文字に結ばれていつもの笑みも無い。
もしかして気分でも悪いのだろうかとツーは心配になる。
だとしたら使いに出すなんて悪い事をしたかもしれない。

(*゚∀゚)「気分が悪いなら後でも」

ツーの言葉にデレはふるりと首を横に振る。

ζ(゚─゚ζ「リテント様からの伝言をお伝えします……」

暫くして搾り出すようなデレの声。
どうしてだろう。
何だか嫌な予感がした。


13 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:40:09 ID:nDuBn9DQO
ζ(゚─゚ζ「ミ,,゚Д゚彡『過去はどうあれ今の神子様は尊き御方。下賎の者と言葉を交わすなど有ってはなりません。どうか私の事はお忘れ下さい』」

(*゚∀゚)「え」

ζ(゚─゚ζ「ミ,,゚Д゚彡『私は神子様をお守りするただの盾。どうかくれぐれもこのような瑣末な事に心乱される事の無きよう。神子様の御役目をお果たし下さい』
以上がリテント様からの「嘘だ」

ぽつりと、デレの言葉の途中でツーが呟く。
呆然と。思わず零してしまったかのように。

(*゚∀゚)「フサがそんな事言うはず無いさ。フサだけは絶対言わない」

立ち上がったツーがデレの肩を掴む。
ギリ、と食い込む爪にデレは少しだけ顔を歪めた。


14 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:40:20 ID:nDuBn9DQO
( ∀ )「デレも人が悪いっさ。そんな嘘でオレをからかうなんて。今なら許してあげるから本当の事を言うっさ。早く。ほら」

デレはもう一度首を横に振る。

ζ(゚─゚ζ「いいえ神子様、いいえ。デレは神子様に嘘を申しません。それは神子様が一番良くご存知のはず」

( ∀ )「っ」

デレの言う通りだった。
今や件の幼なじみよりも長い付き合いとなった一つ年かさの侍女。
ツーの知る彼女は決して自分に嘘を吐こうとはしない。
都合の悪い事も良い事も全部正直に話してしまう彼女だからこそ、ツーはデレの事を信用しているのだから。

でも信じたく無かった。
だってデレの言葉が真実だと言うのなら。
神子としての役目を全うしろと言う事は。


15 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:40:30 ID:nDuBn9DQO
( ∀ )「フサもオレに死ねって言うんさ……?」

デレは何も答えない。
けれどつまりそういう事だった。
神の花嫁。神子様。
などと崇め奉られてはいるがようは単なる生贄。
16になれば聖域の泉へ沈められる、世界を保つ為の人身御供だ。
これを怠れば世界が滅びてしまうのだと言う。


16 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:40:56 ID:nDuBn9DQO
遠い昔、一度だけ他国からの侵略により儀式が遅れた事がある。
首都を占拠した、神など居ないと息巻くラウンジ国の王によって神子が拘束されてしまったせいだった。

(´<_` )『ほら見ろ世界は滅びていない。神など居ないのだ!』

本来儀式が行われるはずだった日の翌日、神殿で神子の腰を抱き高笑いする王。
そこへ走り込んできた兵が急ぎ告げたのはラウンジが火山の噴火によって滅びたという知らせだった。
儀式を行わせなかった王は兵全ての怨みを買いその場で殺された。
残った兵はこれ以上儀式を遅らせた時の被害を恐れた他国により一掃された。


17 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:41:11 ID:nDuBn9DQO
偶然だったのかもしれない。
けれどもしも本当に神への贄が必要なのだとしたら?
その場合ニューソクが滅んだとしたら世界はどうなるのか。
各国のお偉方がそう危機感を感じるには、ラウンジの滅亡は十分に衝撃的だったのだ。

それ以来、これまでも腫れ物に触る様な扱いを受けてきたニューソクは、無条件で他国からの援助を受ける神の降りる国になった。
ニューソクが豊かなのはその為だ。


だから誰もその神子を一人の少女として扱わない。


18 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:41:24 ID:nDuBn9DQO
( ;∀;)「うっ……うぇえ」

ボロボロと涙が溢れ、ツーの口から嗚咽が漏れる。

死ぬ事はもう怖くない。
覚悟はとうに出来ている。
けれど誰も自分の死を悲しまない。
彼の為に死のうと思った、大切な幼なじみさえも。

( ;∀;)「ひうっ、、ああ、あ、うわあぁああ」

全世界から死を望まれる少女は侍女の胸で声を上げて泣いた。


19 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:41:41 ID:nDuBn9DQO
─────
あれから一月が立った。
三月立った、半年立った、直に一年が立つ。
その間何事も無かったかの様に日々は過ぎていった。
ツーがフッサールにコンタクトを取ろうとする事は二度と無かったし、フッサールは優秀な近衛として責務を全うしていた。
ただツーが笑わなくなっただけだ。

ζ(゚─゚ζ「……」

あれからツーはデレの前でも神子様として振る舞うようになった。
のんべんだらりとした姿を見せる事が無くなり、言葉遣いも丁寧に、非の打ち所の無い神子様になった。
ツーにとってフッサールが如何に大切な存在か解るというものだ。


20 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:41:55 ID:nDuBn9DQO
ζ(゚─゚ζ「あの男……」

部屋に飾る花の茎切りをしていたデレは、きりり、と唇を噛む。

あれから何度もフッサールにツーと話してやって欲しいと頼んだが、彼は決して首を縦に振ろうとしない。
一介の近衛ごときが聖なる神子様と私的に言葉を交わすなど、恐れ多い事だと。

フッサールの言葉は確かに解らなくもない。
一般の民衆にとって神子は神に等しい存在だから。
でも、それでも。

今日もまたデレはフッサールの所へ向かう。


21 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:42:09 ID:nDuBn9DQO
─────

週に一度の行列、神子としての義務を果たしたツーはデレを下がらせてぐったりとベッドの上に横たわった。
今やこうして一人で居る時しか気を休ませられない。
誰と居る時も神子様として振る舞い、ツーとして誰とも言葉を交わす事は無い。

デレには悪い事をしているなと思う。
以前と接し方の変わった自分を見て、いつも泣きそうな目をしている。
ああけれど

(*゚∀゚)「ごめんさデレ」

誰からも認められる完璧な神子様として振る舞おうと決めた。
ツーとして望まれないからせめて、望んでくれる神子様で有ろうと思った。


22 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:44:01 ID:nDuBn9DQO
儀式の日まで後一週間。
演じ切る自信は有る。
そうしたらフッサールは喜んでくれるはず。
あんな事が有った後も嫌いになれない所か相変わらず心の大半を占める幼なじみ。
だからツーはもう要らない。

(*-∀-)「オレはもう要らないんさー」

「そんな訳無いから」

(*゚∀゚)「え」

聞き覚えのある声に慌ててベッドから顔を上げる。
とん、と音を立てて天井から降りてきたのは一人の近衛。
焦げ茶の髪と少し吊った鳶色の目をした男。

ミ,,゚Д゚彡「ツーちゃんは俺が要るから」

驚きと疑問と他にも色んな物で頭がこんがらがって言葉を失うツー。
そんなツーに少しだけ微笑んで幼なじみは手を差し延べる。

ミ,,゚Д゚彡「だから俺にさらわれて」

反逆者が此処に居る。


23 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:44:11 ID:nDuBn9DQO
─────

時は遡りツーとフッサールが離れ離れになったころ。

ツーが神官達に連れて行かれて暫くしてもフッサールはその現実を受け入れられないでいた。

神子を輩出した家は爵位を与えられる。
ツーの両親は喜び勇んで首都へ出た。
神父様は素晴らしい名誉だとツーを祝福した。
村の人間は口々にツーを讃えた。
フッサールの両親は誰も居ない隣の家の前でツーを待つ、フッサールを連れて帰って一緒に泣いた。

「どうしてあの子が」

ぽつりと漏らした両親の言葉はフッサールの胸にさざ波を立てた。


24 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:44:22 ID:nDuBn9DQO
どうしてツーが選ばれたんだ。
きっと両親はそう言いたかったに違いない。
けれどフッサールには別の意味を持って響いた。

どうしてツーが犠牲にならなければいけない。
街の人間達を見れば尚更そう思わずに居られない。
自分達の平穏の為にツーを殺す事に何の疑問も持たない、それを当たり前だとする人々。
そんな奴らの為にどうしてツーが死ななければならない。


世界が自分の為にツーを犠牲にするのなら、ツーが自分の為に世界を犠牲にしたって良いはずだ。


25 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:44:33 ID:nDuBn9DQO
幼い故に暴走する思い。
それから直ぐに病と事故で両親をそれぞれ亡くし、自分以外に誰もツーの死を悲しまなくなったフッサールは都へ向かう。
ツー以外に子供の出来なかったツーの両親が、跡継ぎとしてフッサールを引き取ろうというのだ。
同年代に比べて身体も頭も発達の進んでいた彼の事をツーの両親は覚えていた。

自分達の娘を進んで差し出しその恩恵に甘んじる様な人間達だ。
ヘドが出る様な相手だったが、フッサールにとって願いを叶える又とないチャンスだった。

そうして彼等の養子となったフッサールは一級の教育を受け、血を吐く様な訓練を積み此処に居る。
ツーの前に立っている。


26 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:44:43 ID:nDuBn9DQO
ミ,,゚Д゚彡「行こうツーちゃん。こんな所出て二人で暮らそう」

(*゚∀゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「ツーちゃん」

ツーはなかなか反応を返そうとしない。
焦れてそのほっそりとした手を取ろうとして、その手を叩き落とされた。

(*゚∀゚)「ふざけんな」

ぎろり、ツーの丸くて大きな瞳がフッサールをねめつける。

(#゚∀゚)「あんたがオレに神子様で居ろって言ったんさ。それなのに今更。今更来て神子様を辞めろなんて意味が解らないっさ」

ミ;,゚Д゚彡「違、あれは」

あれは周りに自分を信用させる為だった。
もしも新米の近衛が、神子様と個人的に親しくしているなんてバレたら即解雇。
そうしたらツーの側に居られない。
さらう為の情報収集、準備も出来ない。
だから、何処から漏れるかも解らないのに下手な事は言えなかった。

ちゃんと説明したいのに上手く言葉が出ない。
だってツーが泣くから。


27 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:45:04 ID:nDuBn9DQO
(#;∀;)「何が違うんさ。フサが言うから、頑張ろうって思ったのに」

フサの中の"ツーちゃん"は泣かない子だった。
転んでも落ちてもいじめられても泣かない子だった。
なのに泣いている。
自分が泣かせた。
どうしよう。
解らない。
オロオロするばかり。

(#;∀;)「大体オレが此処から居なくなったら世界は滅んで皆死ぬの解ってるんさ!? デレだって死んじゃうし、それに逃げたってオレもフサも死んじゃうのに意味なんて無いっさ!
もう少し考えたらどうなんさ馬鹿フサ。フサなんて嫌いっさ大嫌いっさ!」

ミ,, Д 彡「っ!」

嫌いと言われて今度はフサも泣きたくなる。
どうしてこうなったんだろう。
お伽話の王子様みたいにかっこよく、囚われのお姫様を助けるつもりだったのに。
ツーは優しいから頷いてくれないかもしれないと思って、でもその時は無理矢理連れて行こうって。
なのにどうして自分は突っ立っている事しか「てい」ミ,, Д 彡「ふぎゃっ」

(*;∀;)そ「!?」


28 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:45:14 ID:nDuBn9DQO
突然頭の上に落ちてきた何かに、フッサールが頭を押さえて屈み込む。
良く見ると落ちてきたのは鞄らしい。

ζ(゚ー゚*ζ「とうっ」

ミ,, Д 彡そ「ぐはっ」

そしてさらに人が落ちてきてフッサールは今度は潰れて絨毯とキスをするはめになった。
余程痛かったのか声も出せずにびくびくと震えている。

ζ(^ー^*ζ「何ツー様泣かせてるんですか。ぶち殺しますよ」

(*゚∀゚)「……デレ?」

ζ(^ー^*ζ「はいツー様」


29 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:45:24 ID:nDuBn9DQO
びっくりし過ぎて思わず涙の引っ込んだツーに、デレはニッコリ笑顔を返す。
足元にはフッサールを踏みつけたままだ。

ζ(゚ー゚*ζ「涙を拭いて下さいツー様。ツー様は笑ってる方が素敵です」

「う、うん」

差し出されたハンカチを受け取り、目元を拭う。

ミ;,×Д×彡「デ、デレさん、退いてくれませいたたたたた」

ζ(^ー^*ζ「ツー様を散々悲しませた罰です。お断りします」

ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり。
花も恥じらう様な笑顔を浮かべて、デレはブーツの踵でえぐる様にフッサールを踏みにじる。


30 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:45:36 ID:nDuBn9DQO
(;゚∀゚)「あの、流石に可哀相だから止めてあげてさ。フサが泡吹きそうな顔してる」

ζ(゚ー゚*ζ「ツー様がそうおっしゃるなら」

思わずツーが言うと、ぴたり、と踏みにじる足を止めてデレはフッサールの上から降りる。
フッサールは倒れたままだ。
ぴくぴく震えて、暫く起き上がれそうにない。

ζ(゚ー゚*ζ「さて、ツー様」

(;゚∀゚)「な、何さ」

少しビビりながらツーは返事をする。

ζ(゚ー゚*ζ「逃げて下さい、此処から。この男と。
色々有りましたがこの男がツー様の事を想っているのは本当です。きっと大切にしてくれます。私が保障します」

言いながらデレは少しだけその時の事を回想する。


31 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:45:54 ID:nDuBn9DQO
ミ,,゚Д゚彡『一人の女の子を犠牲にする価値がこの世界にあると思いますか』

ζ(゚─゚*ζ『……価値云々はともかく私はツー様が好きですから、ツー様の方が大切です』

ミ,,^Д^彡『貴女ならそう言うと思った。
ではあなたのツー様、俺のツーちゃんの為に協力して貰えませんか? こんな世界の為にツーちゃんが死ぬ必要は無い。

俺はツーちゃんをさらいに来たんです』

何度話してもさっぱり応える気を見せなかった男が突然部屋にやって来てそんな事を言うから、当然戸惑った。
でも、ツーちゃん、と愛おしそうに名前を呼ぶ声に嘘は無いと思ったから。

ζ(゚ー゚*ζ『いつ、決行ですか』

本気なのだと思った。


32 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:50:55 ID:nDuBn9DQO
ζ(゚ー゚*ζ「この部屋には緊急時に備えて幾つか脱出経路が用意されています。中は迷路の様に入り組んでいますが、正しい道の地図はもうリテント様に渡してあります。ですからお早く」

(*゚∀゚)「……。行かない」

ミ,,゚Д゚彡「どうして」

少し考え込む様子を見せてツーはゆっくりと首を横に振る。
デレと、いつの間にか復活していたフッサールはじっとツーの次の言葉を待つ。

(*゚∀゚)「さっきも言ったけどそんな事したって意味無いんさ。オレが逃げたら世界は滅んで皆おだぶつ。どうせ死んじゃうんだから皆の役に立ちたいっさ」

ミ,,゚Д゚彡「でも世界が滅ぶまでの間は自由に過ごせる。それに、ツーちゃんを犠牲にしようとしてる連中の世界を守ってやる義理は無いはずだ」

ζ(゚ー゚*ζ「そうかもしれない。けど、デレとフサはオレに幸せなって欲しいって思ってくれてるだろ?
確かにその提案は魅力的だけど、そのせいで大切な人が死ぬのは嫌なんさ。オレはデレとフサに生きて欲しい」

デレとフッサールが居る世界を守りたい。
そう言ったツーの言葉に、言葉を贈られた二人は顔を見合わせくすくす笑った。


33 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:51:06 ID:nDuBn9DQO
ζ(゚ー゚*ζ「ならやっぱりツー様は此処から逃げて下さらねばなりませんわ」

(*゚∀゚)「な、何でさ」

ミ,,゚Д゚彡「ツーちゃんの為にこんな事しようとしてる奴らが、ツーちゃん居なくなってどうすると思う?」

意味が解らなくてツーは戸惑いの表情を浮かべる。
二人の声の調子は明るく軽い。

ζ(^ー^*ζ「後を追いますよ、私達は。聖域の泉に飛び込んで」

ミ,,^Д^彡「うん。ツーちゃんの居ない世界に興味は無いから」

二人の目は濁って、奥の方で渦を巻いている。
ツーはこの目に見覚えが有った。
いつだったか、世界が滅びる事こそ正義だと叫び行列にナイフを持って乱入してきた男。
直ぐに取り押さえられたが、組み伏せられつつもツーを見たその男の目にそっくりだ。
あの背筋が凍るような恐ろしさと惹きつけられる奇妙な輝き。


34 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:51:20 ID:nDuBn9DQO
ζ(゚ー゚*ζ「さぁどうしますかツー様。ツー様が私達に少しでも生きていて欲しいと思うなら」

ミ,,゚Д゚彡「俺と一緒に逃げなきゃいけない。無理にさらおうかとも思ったけど止めとくから。ツーちゃんが幸せになれなきゃ意味ないから」

真っ直ぐに一つの事だけを見据える目。
一つの事だけしか見えない目。
狂人の目。

ミ,,゚Д゚彡「「さぁ選んで」」ζ(゚ー゚*ζ

天秤に乗せるのは世界と自分。
二人と自分。
二人と世界。
傾いた天秤を抱えてツーは思う。


多分今自分はあの男と同じ目をしている。


35 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:51:31 ID:nDuBn9DQO
──────
ベッドを退けて絨毯をめくると姿を現す扉。
地下深く潜る穴。
それぞれが明かりを持ち、地図をと荷物を持ったフッサールがツーを先導する。
デレは部屋に残った。
足手まといになりたくないと言って。

ζ(゚ー゚*ζ『二人も女を連れて旅など目立ちすぎますし、それだけ負担も大きくなります。それに、まだやらなければならない事が有るんです』

(*゚∀゚)『でももしデレが手伝ってくれたのがバレたりしたら』

ζ(゚ー゚*ζ『大丈夫です。薬をかがされて眠らされてた事にしますから。実際にちゃんと薬も用意しましたし』

ほら、と言って茶色い硝子の瓶と白いハンカチを掲げてみせた姿を思い出しながらツーは歩く。


36 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:51:42 ID:nDuBn9DQO
(*゚∀゚)「デレ、大丈夫だよな」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だよ。神子様が居なくなった混乱に乗じて逃げてくるって言ってたから」

(*゚∀゚)「それは確かにそうだけど」

ミ,,゚Д゚彡「大体あのデレさんが俺にツーちゃん一人占めさせる訳が無いから。……デレさん来たら俺家追い出されたりして」

(*゚∀゚)「アヒャ、まっさかー」

笑わせて誤魔かしたけれど、デレは来ない。
如何に混乱の中であったとしても、神子付きの侍女は神子様の大切な手掛かり。
手放すはずが無い。
それにその中で逃げれば追っ手を連れて来てしまう可能性がある。
そんな愚は犯せないとデレ自らが言った事だ。

ミ,, Д 彡「(ごめんツーちゃん)」

ツーに心の中で謝りながらフッサールは地図を見る。


37 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:51:52 ID:nDuBn9DQO
大体目算でフッサールなら後10分程度の距離。
だがツーを連れている今は別だ。
動きやすい服に着替えたとは言え、ずっとこもりっきりだったツーは歩くという事にそもそもなれていない。
現に今も既に疲れが見え始めている。

ミ,,゚Д゚彡「少しペース落とそうか?」

(*゚∀゚)「ん、大丈夫。それより早く外に出たいっさ」

ミ,,゚Д゚彡「じゃあ出口に馬が用意してあるらしいから。出たら俺が乗せてあげるから頑張って」

(*゚∀゚)「馬! 了解っさ頑張るっさ楽しみっさ!」

元気になったツーに安心しながら次の分かれ道を右に曲がり、六つの道の左から二番目を通る。
それからはペースを落とすどころかツーのペースが上がり、後ろから突かれる位になった。
外への興味がそうさせるのだろう。
そのお陰で予想より幾らか早く着く事が出来た。


38 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:52:05 ID:nDuBn9DQO
ミ,,゚Д゚彡「よし、後はこの蓋を外せば……」

ギギ、と重たそうな音をさせてフッサールは頭上の石を退かす。
そこから少し頭を出せば、地上だ。

ミ,,゚Д゚彡「ちょっと待ってて」

先に出て辺りの様子を伺う。
人影も声も無い。
有るのは小さな獣の気配だけ。

ミ,,゚Д゚彡「良いよツーちゃん。大丈夫みたいだから出て来て」

差し延べられた手を掴みツーも顔を出す。
それから感嘆の溜め息を漏らした。

(*゚∀゚)「外だ……」

背の高い木々が互いに枝を絡ませ、月の光も殆ど届かない森は不気味に囁く。
それでもツーは心底幸せそうに笑い、フサに抱き着いた。

ミ;, Д 彡「つつつつツーちゃん!?」

(*^∀^)「有難うっさ、フサ」

ミ;, Д 彡「お、お礼はまだ早いから! まだ森抜けなきゃダメだからそれに他にも色々やらないとああもう柔らかっじゃなくてとにかく放れてツーちゃ」

「うむ、そうであるな。礼を言うには些か早過ぎるかと思いますぞ神子殿」


39 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:52:21 ID:nDuBn9DQO
突然響いた重低音に二人はびくりと体を震わせ、フッサールは咄嗟にツーを背後に庇う。
明かりをツーに渡し剣を抜くと、僅かな光を集めてギラリと光った。

ミ,,゚Д゚彡「誰だ」

( ФωФ)「言葉の聞き方に気をつけろ小僧。管轄こそ違えど我輩は貴様の上官であるぞ」

相手も明かりを点けたらしい。
ぼう、と浮かび上がるのは見るも厳つい大男。
大神官、ロマネスク・スギウラ。
その背後には鎧兜を着込んだ近衛隊長、歯車王の姿も見える。

どうしてこの二人が此処に。

( ФωФ)「ふむ。何故だ、という顔をしておるな。答えてやろう、何、簡単な事である」

戸惑う二人を前にスギウラはにたりと笑う。
底意地の悪そうな、下衆な笑みだ。

( ФωФ)「デレが全て教えてくれた」

(#゚∀゚)「嘘だ!」

誰よりも先にツーが叫ぶ。


40 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:52:32 ID:nDuBn9DQO
(#゚∀゚)「デレがそんな事する訳無いっさ! だってずっと一緒で、いつも笑ってくれて悲しんでくれて世界よりオレが大事だって言ってくれた! 追い付いたらまた沢山話しようって!」

( ФωФ)「随分上手く取り入ったようであるな。しかしそれも全て嘘偽りである。あれはな、我輩の娘だ」

(#゚∀゚)「は」

ぽかんと口を開けたまま絶句するツーにスギウラがさらに畳み掛ける。

( ФωФ)「生まれた時より国の為に特別な教育を施した娘よ。周囲には我輩に子供無しと思われておるがな。国への忠誠心だけを叩き込んだ。国の為なら何でもする人形である」

(*゚∀゚)「そん、な……」

( ФωФ)「リテント。貴様も愚かだな。繰り返しデレが貴様の所へ行っていたのは謀反の可能性を探る為だ。貴様は優秀だからただ幼なじみというだけで切るには惜しかったのでな。謀反さえ無ければ次期近衛隊長を約束されていたというのに」

ミ,,゚Д゚彡「……」

血が滲む程唇を噛み締めて、フッサールはスギウラを睨む。
フッサールの胸を占めるのはスギウラへでもデレでもない自分への怒りだ。
何故あの時自分はデレを信用してしまったのか。
最後の最後でデレに騙された。


41 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:52:46 ID:nDuBn9DQO
( ФωФ)「さぁ、神子殿を返して貰おうかリテント。騒ぎになれば神子に傷が付く故我等二人しか居らんが、我輩も今は神官であるが、元は武勇で鳴らしたもの。さらに歯車王が居ればまさか貴様でも叶うまい?」

スギウラが剣を抜く。
狙いはフッサールの首。
そしてツー。

( ФωФ)「我輩が神子殿を確保する。お前はあの男を始末しろ」

|::━◎┥「……」

無言の了承とでも言うかのように歯車王も剣を抜いた。
そして、駆ける。

ミ;,゚Д゚彡「っ、」

フッサールも迎え撃つ構えを取るが、ただでさえ格上の相手が居るのにツーを庇いながら、二人相手は無理が有る。

ミ#,゚Д゚彡「くっそおおおお!!!!」

歯車王の刃を弾こうとした剣は宙を凪いだ。
目の前で銀色が閃く。
首に、落ちる。


42 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:54:28 ID:nDuBn9DQO
─────




キインッ

なのに響くのは肉を断つ音でなく、金属同士がぶつかった時特有の高い音。

( ФωФ)「どういうつもりであるか」

|::━◎┥「……」

歯車王の剣をスギウラの剣が受け止めていた。
歯車王の一撃はフッサールの首では無くスギウラを狙っていたのだ。

ミ;,゚Д゚彡「隊長……?」

|::━◎┥「……何をボサッとしている。行け」

スギウラが歯車王の剣を弾き、フッサールを狙うが歯車王が防ぐ。


43 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:54:42 ID:nDuBn9DQO
|::━◎┥「北に幾らか進めば私達が乗ってきた馬が有る。急げ。神子殿を安全な場所まで案内し、お守りしろ」

(# ФωФ)「歯車王、貴様……っ」

|::━◎┥「早く行かぬか!」

獅子の様な怒鳴り声。
弾かれた様にフッサールはツーを連れて森の奥へ走り去っていく。

(# ФωФ)「待て!」

|::━◎┥「行かせんよ」

追い掛けようとするスギウラを阻み、また剣が甲高い音を立てる。

(# ФωФ)「退け歯車王! 貴様どういうつもりだ!」

|::━◎┥「どういうつもりも何も彼等を逃がす気だ。ロマネスク」

(# ФωФ)「馬鹿なっ、そんな事をすれば世界が滅ぶぞ!」

|::━◎┥「そうだな。だがこんな世界は滅んでしまった方がいい。一人の少女を犠牲にする価値はこの世界には無いよ」

兜の向こうで歯車王は笑む。


44 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:54:59 ID:nDuBn9DQO
|::━◎┥「ずっと考えていたんだロマネスク。何故シューは死んでしまったのか。どうしてあの時さらってしまわなかったのか。たとえ彼女が誰を想っていようと連れ去れば良かった」

(# ФωФ)「黙れ! シューが己の死を持って永らえさせた世界だぞ。それを少しでも守るのが残された者の義務では無いか!」

|::━◎┥「かもしれないな。だが私は彼等に夢を見たんだ。私が出来なかった事をした彼に、彼を望んだ彼女に。想い合っている二人が幸せになれない世界など滅ぶべきだ。世界はあの時滅ぶべきだったんだよロマネスク。お前達が幕を引くべきだった」

(# ФωФ)「黙れ黙れ黙れえええ!」

がむしゃらに向かってくるスギウラを軽くいなしながら、歯車王は叫ぶ。
彼等に向かって。
祝福を。

|::━◎┥「行けフッサール! ツー! お前達の望む世界を手に入れろ! この歯車王にもロマネスクにも出来なかった事を成してみせろ! お前達に世界全ての幸福を!」

|::━◎┥「ははははははは!」

暗い夜に歯車王の笑い声が響く。
全ての重荷を下ろした様に、とても清々しい声だった。


45 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:55:17 ID:nDuBn9DQO
──────
馬に跨がり森を抜け街を通り過ぎ幾つか国境を越える。
デレの用意した鞄の中には着替え意外に結構な金額の路銀が入っていたから、あまり旅の途中で苦労する事は無かった。
直ぐに連れ戻す予定ならこんな物必要無かったろうに。

(*゚∀゚)「デレ……」

デレが何を考えていたのか今となってはもう解らない。
でも、デレがくれた言葉の全部が嘘だとは思えなかったから、ツーは少しだけ安心した。

やがてたどり着いた湖の側で二人は小さな小屋を見付けた。
雨漏りはするし、蔦は這ってるしで、もう今は誰も住んでいない様だ。
案外中は綺麗だったので、ツーとフッサールはボロくなった場所を修理しつつ有り難くその小屋で暮らす事にした。


46 ◆pGBf2w9thI:2010/09/05(日) 20:55:31 ID:nDuBn9DQO
湖で魚を釣り、近くの森で木の実を拾い、野兎を狩る。
時々少し離れた街まで出掛けて生活用品や、湖の側では手に入り辛い野菜と換えたりする。
原始的な生活かもしれないけれど、のどかで幸せな生活。
気付けばあの日から一年が経っていた。

儀式の日、その翌日は二人で身を寄せ合い構えていたけれど、未だに世界は滅びていない。
遠い昔に起きた火山の噴火は本当に偶然だったのかもしれないし、誰もが気付かない様にひっそりと実は滅びに向かっているのかもしれない。

もし明日世界が滅びたらそれは自分達のせいだ。
フッサールとツーはその事をちゃんと自覚している。

(*゚∀゚)そ

(*゚∀゚)「フサ! フサ! 今お腹蹴ったさ!」

ミ;,゚Д゚彡そ「本当!? 待ってて今助産婦さん呼んでくるから!」

(*゚∀゚)そ「ちょ!? いやまだだってフサ! まだ産まれないって! フサ!」

でも、今がとても幸せだから。
ごめんね、と謝りながら二人は笑う。
自分達の為に世界よ犠牲になってくれと。

いつかその罪で地獄に堕ちる時が来ても、二人でなら怖くはない。

[ 2010/09/07 20:19 ] 三国志Z作品 | TB(0) | CM(0)

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