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6.建てるようです

建てるようです

1 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:26:41 ID:???0
VIP規制につきこちらに立てさせていただきます。
三国志Z参加作品です。
次レスより31レス(予定)。

どうぞごゆるりと。


2 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:28:04 ID:???0
(  - )「ニイタカヤマ、ノボレ ヒトフタマルハチ」

 私の隣で画面から視線をそらさずに無線に向かって小柄な彼女はつぶやいた。

 直後、向かいのビルの背後から爆発音がし、非常を報せるベルが鳴り響く。

 ザッ

( Д )『トラ・トラ・トラ ノボル』

 ザッ

(  - )「了」

 ザッ

 ノイズ混じりの会話。
 平和とはかけ離れた場所。まるで戦争のような。

 ……そう、私は戦争をしている。
 このVIP市を相手に戦争をしかけているのだ。
 首謀者は私。
 この市を倒し、私は私の「国」を作る。

 先ほど爆音が響いたのは政令指定都市VIPの中心、VIP市役所だ。
 すでに日が落ちるのはとても早い季節であり、夜闇に紛れての宣戦布告である。
 いや、宣戦布告自体は済ませてある。なのでこれが開戦の合図とでも言おうか。
 私の、私たちのパールハーバーだ。


3 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:28:25 ID:???0
 五年前まで私には妹がいた。
 そう、亡くなったのだ。年が二桁も行かないうちに。

 生まれたときから体が弱かった。
 肺に異常があると発覚したのは二歳のときだった。

(*゚ー゚)「おねーちゃん、かなしいの?」

 何が悲しいのか理解していないような無邪気な顔に、私は何もいえなかった。
 法律で15歳以下の臓器移植は認められないことも知っていた。
 海外で移植を受けようにも家に金がないのも重々承知していた。

 その重圧に耐えかねてか父親は失踪。
 母親も妹の後を追うように過労で倒れ、驚くほど簡単に逝ってしまった。
 五年前から私は、はれて孤児ってわけだ。

 どうして世間は私たちを苦しめるのだろう。
 私たちが何かしたのだろうか。

 悪いのは、この国だ。
 この国の制度が悪い。

 だが、私は政治家にはなれない。何故か。
 この国の法律のせいだ。
 この国は私のすべてを拒む。

 だったら、私もこの国を拒み
      新たな国を建ててやる。
                             建てるようです。


4 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:28:41 ID:???0
 再び轟音が響く。

(  - )「4-N爆破。次対象3-W コールを」

 数秒の後、ノイズ混じりの音声が届く。

 ザッ

( Д )『ヤー』

 双眼鏡から目を離さずに小柄な彼女は手元のスイッチを押す。
 同時に轟音が響き、向かいのビルから砂煙があがる。

(  - )「進路グリーン。ノボレ」

 複数の銃声が向かいのビルから聞こえる。
 そろそろ突入から五分。統率も取れてくるころだろう。

( ∀ )「……ごめんな」

(  - )「……? 何がでス?」

(  - )「リーダーが弱気になってはいけないのでスよ」

(  - )「じきにサスガたちが到着しまス。 がんばってください」


5 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:29:08 ID:???0
 建国を計画してからまず、仲間を探した。
 同じようにこの国に対して不満を持っている人、特に男の人、つまり兵力がほしかった。
 頭脳は私で十分だろう。自慢じゃないが頭には自信がある。

 インターネットを介して募集してみたところ、それなりに頭の切れる人たちが集まってくれた。
 少し自信が持てた。

 ある人のマンションを拠点として、連日連夜会議は続いた。
 ターゲットとする都市。
 侵攻手段。
 日時。

 頭の切れるリーダー、としての尊敬も受けてきた。
 信頼を置いた仲間たちだ。

 そして、ターゲットとする都市も決まった。
 この国第三の都市、VIP。
 奇しくも、私の故郷である。

 年上の仲間たちは気を使ってくれたが、そんなことに情をかけるほど私は優しくない。
 そういうとどこか安心したような、悲しそうな顔をして仲間たちは私を見た。

 次に、VIP市の情報収集が始まった。
 人口、面積などの基本情報なんかは役に立たない。
 攻め込む予定の市役所の設計をはじめ、市長の身辺割り出し。
 都市機能の麻痺に必要な情報などなどを中心に探った。

 サスガ、という双子が情報収集には貢献してくれた。
 やがて私は、この仲間たちを家族のように感じていた。


6 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:29:24 ID:???0
( Д )『……どっちだ』

 ザッ

(  - )「非常階段へ」

( Д )『了』

 ザッ

(  - )「サスガ」

 はいよ、と短く答えた声が聞こえ、右の方のビルの屋上から何かが射出される。

(  - )「4階に3発と6階に2発お願いしまス。弟は5階と7階に2発ずつ」

 ロケットランチャーだ。轟音を立てながらビルの壁に穴があく。
 月明かりさえも遮ってしまうほどの土煙が舞う。

(  - )「兄は本部へ」

( ´_ゝ`)「既にいるが」

 弱い光の懐中電灯を手に背後からぬっと出てきた人影。

(  - )「『勝手な行動は慎んでくださイ』」

 む、とした彼女が発する言葉と同じ言葉が無線から聞こえる。
 おそらく、サスガ弟だろう。


7 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:29:40 ID:???0
 何人が死ぬんでしょうね、とつぶやいた声に私は情報をまとめていたペンを動かす手を止めた。

「いまさら怖気づいたの?」

 まさか、と鼻で笑う声。

(,,゚Д゚)「俺たちの目標のために死んでもらうのは確かに悲しいことかもしれない」

 と別の声。最初に賛同してくれたギコさんだ。

(,,-Д-)「……だが、仕方のないことなんだ」

( <●><●>)「殺人を正当化、ですか」

 資料の山からひょこ、と顔を出して声を発したのはワカッテマスさん。
 たまにこうして、私たちの決意を揺るがすかのように発言をする。

(,,゚Д゚)「そのとおり、われわれが行うことはけして褒められることではない」

(,,゚Д゚)「現行の法律の下では、だがな」

「……」

(,,゚Д゚)「今の法のせいで死んでいった人たちを考えれば……多少の犠牲は安いほうだろう」

 私へのフォローだろうか。
 頼んでもないくせにギコさんはやたら私に優しくする。同情からきているような気がしてたまに不快になる。
 しかしその反面、どこかで落ち着いている自分もいるのだ。
 さしずめ、彼はこのグループのお父さんである。


8 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:29:57 ID:???0
( ´_ゝ`)「よ、っと」

 武器を背負いサスガ兄が向かいのビルの非常階段につながるロープに器具を取り付けた。

(  - )「ギコ、サスガ兄が8階の東非常階段に行きまス」

(,,゚Д゚)『了 弾が切れそうだ』

(  - )「渡しましタ」

(,,゚Д゚)『ありがたい。 弟、西側に砲撃を』

(´く_` )『あいよ』

 どう、という音がして見慣れた土煙が上がる。

( ∀ )「15分か……」

(  - )「そろそろキツいでスね」

( ´_ゝ`)「ヒトフタヒトナナ 出る」

 シャァァァアアアア と音を立ててサスガ兄は向かいのビルへと続く闇に消えた。
 誰にも聞こえないように「生きてくれ」とつぶやき、左手を胸で握り締めた。

(,,゚Д゚)『……合流確認 ノボル』

(  - )「東階段から行ってください、弟は9階西に爆撃を」


9 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:30:17 ID:???0
 計画の立案が良好に進み始めたころ、実働隊を編成することになった。
 メンバーの8割が男とはいえ、実際に戦闘に耐えうる人員は限られるからだ。
 お父さんのギコは真っ先に名乗りを上げた。

(,,゚Д゚)「俺が先陣を切る、これは譲れん」

( ´_ゝ`)「あんたが行くなら俺たちもついていくぞ。 な、弟者」

(´く_` )「そうだな、俺たちは行くべきだろう」

(#゚;;-゚)「……わたしも行かせてくださイ」

 でぃさん。私より年上で、数少ない女性の一人。
 幼いころに私と同様に血縁を亡くした経験を持ち、原因も、この政府の糞みたいな法律のせい。
 人一倍、他人を傷つけることを嫌い、慎重派だった彼女がまさか戦闘に参加するだなんて。

(,,゚Д゚)「だめだ、女を傷つける位置に立たせるわけには行かない。」

 リーダー、あんたも同じだ、と私にまで釘を刺してお父さんはでぃさんの参戦を留めた。

(#゚;;-゚)「おねがいしまス」

 同調するように私は、絶対にいく、その際にでぃさんを補助として傍におきたいと付け加えた。

(,,゚Д゚)「……どういう意味か分かって言っているのか?」

 静かに頷く。
 でぃさんの情報処理能力は確かなものだった。彼女を司令塔として作戦を遂行すれば、間違いなく成功する。
 そんな自信があった。


10 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:30:38 ID:???0
(#゚;;-゚)「12階で迎え撃つつもりのようでス」

(,,゚Д゚)『弟、合図したら11Fの東階段に撃ち込んでくれ』

(´<_` )『了解した』

 市長がいるのは最上階の17F。
 そこまで辿り着き、市長を討ち、この都市の全権を入手する。
 それがこの作戦の目標である。

 13階以降は市の機能を司り、
 個人や法人を問わずデータを保管、管理するスーパーコンピューターや
 外部に漏らすことが出来ないような市の資料や、文化財が保管されている資料室などがあり、
 要するに、本当に踏みいられては困る領域であると言えるだろう。

 そのため、12階までで何としても食い止める。
 彼らの考えはそんなところだろうか。

 そして、私たちがいるビルは10階までしか無い。
 この屋上は11階の位置にある。
 遠距離射撃が困難になるのだ。
 現在侵入しているのはギコさんと兄者さん
 更に後続に10人程度の部隊がある。

 あと、1人。

(,,゚Д゚)『渋沢、準備はいいか』

『ちょうど一服終わったところだ』


11 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:30:57 ID:???0
  _、_  
( ,_ノ` )「さあて、始めようか」

 弟、と短く呟いたギコさんの声に合わせて東側から砂煙が上がり、
 市役所の東側の建物から黒い影が飛来する。

 両手にサブマシンガンを持ち、黒いマントに迷彩スーツ。
  _、_  
( ,_ノ` )「おお、熱烈な歓迎だな」

 視界の悪い東階段に大量の武装した人間が乗り込んでくる。
  _、_  
( ,_ノ` )「だが、もう少し周りを見ることが重要だぜ?」

 渋沢が床を蹴り、建物の内側に入り込んだ瞬間、爆音とともにさらに砂煙が上がった。
  _、_  
( ,_ノ` )「時にその油断が命取りだ、わかったか若造ども」

 階段の崩れる音に混じって怒号や悲鳴が多数聞こえる。

(,,゚Д゚)『派手にやりすぎだ、馬鹿野郎』
  _、_  
( ,_ノ` )「ちょっとした挨拶って奴だ」

 まあ、今ので東は通れなくなったがな。と小さく付け加える渋沢。
 こんな状況下だと言うのに、無線から聞こえる二人の声はとても楽しそうで。
 一瞬、ここがまだあの作戦会議室かと思ってしまいそうになる。

 しかし、この埃の匂いがそれさえも許さない。


12 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:31:14 ID:???0
 ここは、戦場。
 私たちの聖戦の、場所。
 私たちが生きてきた意味。

 この戦争が終わったら。
 私は、彼女に顔向けできるのだろうか。
 私は、精一杯生きたといえるのだろうか。
 彼女の分まで――。

『12F突破ァ!!』

 轟音とともに聞こえた歓喜の声に、現実に引き戻された。

「追手は?」

(,,゚Д゚)『兄が始末してる。そこまで数もいないようだ』

「了解。コンピュータールームを探して」

(,,゚Д゚)『……思った通り、地図とは大分違うぜ』

 予想通り。
 12F以降は一般公開されていないのだから、地図が正しいとは言えない。
 まして市の心臓部だ。そんな簡単に正しいものを公開するはずがない。

 逆に言えば、この地図に載っていないような秘密が蔵された部屋が他にもあるのかもしれない。
 まあ、他にどのようなものが眠っているのかは想像もつかないし、
 あまり考えたくもない。


13 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:31:32 ID:???0
 ない、ない、ない、ない。
 14Fを突破した彼らからの返答はそれらだけであった。
 そこにあったのは廊下のみ。部屋がないのだ。
  _、_  
( ,_ノ` )『隠し部屋……まさかな』

( ´_ゝ`)『だが空間はあるようだぞ。入口が無いだけだ。』

「……」

(#゚;;-゚)「とにかく、上へ向かってくだサイ」

(,,゚Д゚)『……だがよぉ、』

 誰も追って来ないし、誰も迎えてくれない。
 大事なものがあるとは思えないほど不気味だぜ。

 ギコさんにしては珍しく歯切れの悪い言葉。

 そして、16F。この上に市長がいるはずなのだが。

( ´_ゝ`)『階段がない』

(,,゚Д゚)『んでもって……』
  _、_  
( ,_ノ` )『この大きな扉、か……』

「……」


14 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:31:52 ID:???0
(,,゚Д゚)『開けるぞ』

 サブマシンガンの銃声と、錠が外れ落ちる音。
 重い扉を動かしたような音がしたと思ったら、また別の銃声が聞こえた。

 いや、銃声ではない。爆音だ。

(#゚;;-゚)「……トラップ!」

 はるか頭上から細かいほこりが落ちてくる。
 一度咳払いをし、何とか平静を保つ。

「ギコさん、大丈夫?」

『おう、ちょっと油断しちまった』

(#゚;;-゚)「被害ヲ」

『あー……。少し歩きづらくなっちまった』

(#゚;;-゚)「……っ!」

「兄者さんと渋沢さんは?」

『安心しろ嬢ちゃん、俺たちは大丈夫だ』

『しっかしここは……』


15 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:32:08 ID:???0
 壁一面に資料の棚が並び、そこにらせん階段が取り付けられ、中央には巨大な機械の塔がそびえている。
 それが、砂煙の晴れた彼らの視界に映しだされたものだった。

「多分、それが市の情報すべてをつかさどるスーパーコンピュータだと思う」

「兄者さん、お願いできる?」

( ´_ゝ`)『任せろ』

(,,゚Д゚)『どこかの映画に出てきそうな部屋だな、しかし』
  _、_  
( ,_ノ` )『13Fから全部吹き抜けか……。
     今まで一切部屋が無かった理由もわかるってもんだ』

( ´_ゝ`)『……嬢ちゃん、転送するぞ』

 目の前にあるノートパソコンに市の膨大な情報が流れ込んでくる。
 その中から目的の情報を探り当て、権限を盗み出す。

 隣に立つ中央総合病院。
 そこの電力制御権限。

 ザザ ザ ザザガガ

 いきなり無線のノイズが酷くなった。
 何事かと聞く前に、もはや何度目かもわからないが、向かいのビルが爆ぜた。

 爆ぜたのは13Fの位置。
 ちょうど彼らがいる場所だ。


16 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:32:24 ID:???0
『ガガ ようこそ、テロリスト諸君』

『君たちの目的が何かは知らない。しかし、ここまで市の文化や資産を破壊した罪は大きい』

(‘_L’)『副市長フィレンクトが直々に消してやろう』

(; ∀ )「!?」

 副市長!?
 馬鹿な。そんなポジションは無かったはずだ。
 市長ハインリッヒはカリスマ性を発揮したワンマンで市民の人気を集めた。
 それでいながら誰も信用せず、両親はおろか配偶者さえいない。
 それがこのVIP市長ハインリッヒのはずだった。

 しかしここにきて副市長。
 議会に一度も名前が出たことさえないのに。

『不意打ちたぁ、一流の男としては見れねえなぁ』

 ノイズの中に野太い声が響く。
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~『煙草の火ィ、ありがとよ』

(‘_L’)『……ここは禁煙だ』

 短い銃声が連続で鳴る。音からしてフィレンクトもサブマシンガンなのだろうか。

(#;゚;;-゚)「ギコさん! ギコさん!!」


17 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:32:36 ID:???0
 お父さんの声はいくら呼びかけても、返ってはこなかった。
 同じく、兄者さんの声も。

( ∀ )「……っ」

 初めて、この作戦で死者を出した。
 相手側ではなく、自分側の陣営からだ。
 覚悟はしていた。
 しかし、それを超えての後悔が押し寄せる。

 私のせいで。
 私のせいで、また人を死なせてしまった。
 それでいながら、また自分は無関係な場所にいる。
 彼らと同じ痛み、苦しみを味わうことが出来ない。

 これで、何がリーダーか。

( ∀ )「弟者さん」

『……どうした、嬢ちゃん』

( ∀ )「ランチャーとワイヤーください」

『はぁ!?』

( ∀ )「私が直接」

(*゚∀゚)「ブっ潰します」


18 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:32:51 ID:???0
 ランチャーで屋上付近にワイヤーを打ち込む。
 兄者さんが滑車で乗り込んだのと同じやり方。
 違うのは、彼は下りでこっちは上りということ。

 未だに無線からは銃声と怒号が鳴っている。
 まだ渋沢さんは闘ってくれているらしい。

(´<_`;)「どうやって上るつもりだ」

(*゚∀゚)「逆向きにランチャーを噴出してその勢いで飛びます。離れててください」

(#;゚;;-゚)「……無茶デすよ、リーダー」

(*゚∀゚)「行かせて」

(*゚∀゚)「……ここは、私に行かせてください」

 二人は黙って空間を開けてくれた。

(*゚∀゚)「……ごめんなさい、二人とも」

(*゚∀゚)「私のわがままに付き合わせちゃって」

(*゚∀゚)「でもね、そんなわがままにみんなが付いてきてくれて」

(*-∀-)「本当に、うれしかった」

(*゚∀゚)「ありがとう」


19 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:33:04 ID:???0
 滑車にロープをひっかけ、砲身を股に挟み思い切り撃つ。
 反動で足の方が先に引っ張られるようなものを感じた後、顔にすごい風圧を受けた。

(;゚∀゚)「うおおおあああえええあああ!??」

 あまりの勢いに驚いてしまう。そしてすぐ目の前には市役所のビルが迫る。
 勢いを殺すため前方に向けて再度股に挟んだランチャーを撃つ。
 目の前でガラスが砕け散りその室内に転がり込んだ。

 文字通り、回転しながら突入し、向かい側の壁に激突。
 慌てて起き上がり埃に包まれたあたりを見渡す。

(;゚∀゚)「はぁ……はぁ……」

 動機が激しい。
 手にも額にも背中にも変な汗が滲む。
 懐からハンドガンを取り出し構え、様子を伺――

「そこは、玄関じゃないと思うぞ」

 部屋の奥の方から高く突き刺さるような声が聞こえた。
 ちょうど反対側の方に警戒を向けていた私にとってそれは銃声よりも驚く音であり、
 情けなくも更に甲高い悲鳴を上げてしまった。

「……その声、女か? しかも幼いな」

(;゚∀゚)「だ、だったら、なんだよ」


20 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:34:08 ID:???0
 声のする方にハンドガンを向け、威嚇する。
 が、暗闇と埃のせいでまだ相手の姿を認識することができない。
 自分の汗ですこしぬるぬるしてきた。気持ちが悪い。

「いや、別にどうというつもりはないが」

 少し声が大きくなった。
 近づいてきている。

 埃が晴れ、窓から月明かりが差し込み
 ――市長の顔が、明らかになった。

从 ゚∀从「どうしてこんなことを?」

 喉が渇く。

(;゚∀゚)「あ……あんたに、話がある」

从 ゚∀从「話? それにしてはずいぶんと暴力的じゃないか」

(;゚∀゚)「こ……、この都市をよこせ」

从 ゚∀从「何言ってんだ、お前」

(;゚∀゚)「この都市をよこせと言っている」

从 ゚∀从「理由は」

(;゚∀゚)「け、建国のためだ」


21 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:34:24 ID:???0
从 ゚∀从「建国ゥ?」

(;゚∀゚)「そうだ、建国だ」

从 ゚∀从「なんでそんなことを?」

 轟、と音がして再びビルが揺れた。

从 ゚∀从「下にいる奴らも同じ目的なのか」

(;゚∀゚)「そ、そうだ。 みんなを救うためだ」

从 ゚∀从「へーぇ」

 そう言うと市長は背を向け、
 冷めて酸化しきったコーヒーを二杯紙コップに入れて応接テーブルに置いた。

从 ゚∀从「まぁ、話くらいは聞いてやる」

 そう言うとどっか、と腰をおろし、向かいのガラスの飛び散った椅子を顎で指した。

 警戒しつつも、もしかしたら話が通じるのかもしれない、と思い
 丁寧にガラスを取り除いてから椅子に座った。

从 ゚∀从「んで、みんなを救うってのはどういうことだ?」

 一口含み、眉をひそめて すっぱにげぇ と呟いた市長の顔を忘れることはないだろう。


22 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:34:37 ID:???0
(*゚∀゚)「……私の妹は死んだんだ」

从 ゚∀从「そっか、ご愁傷さま」

 相槌は適当ではあったが、市長はどうやらちゃんと話を聞いてくれているらしい。
 全てを話し終わった時、私は涙を流していた。
 コーヒーは、酸っぱくて苦かった。

(*;∀;)「……だから、だから」

(*;∀;)「こんな世界は、おかしい」

(*;∀;)「おかしい世界は修正されるべきなんだ」

从 ゚∀从「ふーん」

(*;∀;)「でも、修正する人はいなかった」

(*;∀;)「修正する人になることもできない」

(*;∀;)「だったら、修正された国を作るしかないじゃないか」

从 ゚∀从「なーるほーどーねー」

(*;∀;)「だから……」

(*゚∀;)「この都市を、新しい国にしたい」

(*゚∀゚)「弱者が守られる、正しい国にだ」


23 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:34:51 ID:???0
从 -∀从 フーッ

从 ゚∀从「青いな、お前」

(*゚-゚)「……」

从 ゚∀从「そんな綺麗事が通るほどな、世間ってのは甘くねェ」

(*゚-゚)「その世間がおかしいと言っている。だから新しく世間を作るんだ」

 気がつけば再び私はハンドガンを手にしていた。
 しかし銃口は震え、とても狙えるものではない。

 更に市長の視線は私を的確に捉えている。

从 ゚∀从「なら仮にあたらしい世界を作ったとしよう。その世界はどんなものなんだ?」

(*゚-゚)「どの人も平等でどの人も等しく助かる世界」

从 ゚∀从「わかりやすく臓器移植の話をしよう。
      患者A君、心臓が悪い12歳の少年だ。
      患者B氏、同じく心臓が悪い44歳の男性。
      そしてドナーC氏、運悪く事故で命を落とした23歳の男性」

从 ゚∀从「さて、C氏の心臓はどちらに移植するんだ?
      もちろん彼らは全て適合すると考えてほしい」


24 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:35:06 ID:???0
(*゚-゚)「……A君」

从 ゚∀从「どうして」

(*゚-゚)「幼い方を助けた方が、未来につながる」

从 ゚∀从「平等じゃなかったのか?」

(*゚-゚)「ならどれが正解だと言うの」

从 ゚∀从「適合するドナーが二人同時に移植できる状態になるまで待つ」

(*゚-゚)「病気は一刻を争うわ」

从 ゚∀从「だがお前の言う平等と言うのはつまりそういうことだ」

从 ゚∀从「平等に助けるっつーのは、平等に見捨てるのと同じだ」

从 ゚∀从「それがお前の言う理想郷なのか?」

(*゚-゚)「……」

从 ゚∀从「そして二つ目。弱者が徹底的に保護された時、弱者はどうなる?」

(*゚-゚)「平等に……」

从 ゚∀从「違う、強者になる」


25 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:35:22 ID:???0
从 ゚∀从「わかりやすく経済的弱者を上げよう。
      A氏は職に就くことが出来ず、生活が困難な状況だ。
      そこで12万の給与を持つB氏と
      36万の給与を持つC氏。
      彼らから税金を取り、A氏に所得の再分配をする」

从 ゚∀从「税率が1/6だと、B氏からは2万、C氏からは6万。
      つまりA氏は8万受け取ることが出来る。
      そうすると再分配の結果、A氏は8万、B氏は10万、C氏は30万受け取ることになる」

从 ゚∀从「では国の生活最低基準が9万だとしたら。
      A氏はそれに満たないため更に税率を上げることになる。
      C氏のみの税率を上げれば良いかもしれないが、それでは平等に反する。違うか?」

从 ゚∀从「これが、弱者が強者になるということだ。
      働いて金を得ているB氏よりも、働かずに金を得るA氏の方が恵まれている、
      つまり強者になる」

从 ゚∀从「これが平等だって? 笑わせるなよ」

(*゚-゚)「でも……」

从 ゚∀从「でももだってもねえ、これが現実だ」

从 ゚∀从「わかったか、若造めが」

(*゚-゚)「……」

从 ゚∀从「まあ、言いたいことはわからなくはないぜ」


26 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:35:34 ID:???0
 ハンドガンを降ろし、項垂れる私に対して彼女は紫煙をくゆらせつつ呟いた。

从 ゚∀从「あたしも娘がいて……いや、まあ血縁じゃないがな。
      養女を取ったんだ」

从 ゚∀从「もともと体は強い方じゃなかったみたいでな。
      学校も休みがち、友達もいない、と
      絵にかいたような薄幸の少女って感じだった」

从 ゚∀从「……9歳の時に、肺に腫瘍が見つかってな」

 は、として顔を上げる。
 まさか。

从 ゚∀从「手遅れだった。
      すぐに行ってしまったよ」

从 ゚∀从「確かに助かる方法はあったし、
      それは現行の法律によって制限されていた」

(;゚∀゚)「どうして……」

从 ゚∀从「それを認められたか、って?」

从 ゚∀从「……なんでだろうな」

从 -∀从「あたしだってすぐには心の整理がつかなかったよ」

从 ゚∀从「でも、多分」


27 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:35:48 ID:???0
从 ゚∀从「最後に、ありがとう、って」

从 -∀从「なにも出来なかった母親に、あいつはありがとうって言ってくれたんだ」

从 ゚∀从「それが、救いになったんだと思う。」

 ありがとう。
 ただその言葉だけで彼女は救われたのか。
 私は、その言葉を聞いていたら救われたのか?
 いや。
 ありがとう、なんて言葉は妹の口から何度も聞いたと思う。
 であれば彼女と私の違いは。

从 -∀从「お前は、幼すぎた。
      この世界を受け止めるにはまだ早すぎたんだ」

(*;∀;)「くそ……くそ……」

 でも。
 だけど。

 しかし。

「私は、引くわけにはいかない」

(*゚∀゚)「私の後についてきてくれた家族たちのために、
     諦めるわけにはいかないんだ」


28 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:36:00 ID:???0
从 ゚∀从「だったら、どうするんだ?」

 頭にハンドガンの照準を合わせ、きっぱりと宣言する。

(*゚∀゚)「この都市を渡せ」

从 ゚∀从「意味がないと言っている」

(*゚∀゚)「知らない」

 最終目標。都市機能の奪取。
 それをただ遂行する。
 今はそれだけ。

(*゚∀゚)「渡せ」

从 ゚∀从「拒否したら?」

 ハ、と短く笑い両手を大きく広げておどけたようにこう言った。

从 ゚∀从「お前に人の命が奪えるのか?」

(*゚∀゚)「……」

 自信は無い。
 というか、はっきり言えば殺したくはない。
 目標は都市機能の奪取のみ。
 殺人は、避けたい。


29 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:36:11 ID:???0
 ハンドガンを外さないよう、もう片手でノートパソコンを開く。

(*゚∀゚)「隣の病院の電力制御だ」

从 ゚∀从「へェ、やるじゃねえか」

(*゚∀゚)「これを、落とす」

 ドン、と短い音が階下から響いた。

(*゚∀゚)「電源に頼っている医療機器は多いはずだ。
     これを落としたら、恐らくたくさんの市民が命を落とすだろう」

(*゚∀゚)「非常電源の制御も可能だ」

(*゚∀゚)「もう一度言う。都市を渡せ」

从 ゚∀从「だーかーら」

从 ゚∀从「殺せンのかよ」

(*゚∀゚)「……」

 カチ。

(*゚∀゚)「一般病棟の電源を落とした」

从 ゚―从「!」


30 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:36:25 ID:???0
(*゚∀゚)「都市を渡してくれ。頼む」

从 ゚∀从「……」

(*゚∀゚)「次は」

 視界が揺れた。

(;゚∀゚)「一般……病棟の……非常……?」

 意識が飛びそうになる。

(;>∀゚)「な……にを」

从 ゚∀从「敵から出されたものを安心して飲むんじゃねえよ、バーカ」

(;>∀゚)「あのコーヒー……?」

从 ゚∀从「だからお前は幼すぎるって言ったんだ」

(;>∀゚)「卑怯……な」

 力を振り絞って引き金を引く。
 弾はハインリッヒの肩をカスり、服を破いただけだった。

(;>∀゚)「く……そ……」

从 ゚∀从「ハっ、まあ」


31 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:36:41 ID:???0
「お前の考え方、嫌いじゃなかった」

(;-∀-) ガタン

────────
────
──





(*゚ー゚)「おねえちゃん、おねえちゃん」

(*゚∀゚)「なんだ? しぃ」

(*゚ー゚)「おねえちゃんはおおきくなったら、何になりたいの?」

(*゚∀゚)「……そーだなー
     お前の体を治してやりたいし、
     せーじかってのになって難しいことを話してみたいし
     あと、車も運転してみたいかな」

(*゚ー゚)「そっか、いっぱいあるんだね」

(*゚∀゚)「しぃは何になりたいんだ?」

(*゚ー゚)「あたし? あたしはね」


32 ◆zEE54S0iHM:2010/09/05(日) 00:36:53 ID:???0
「大工さん」

「大工さん? なんでまた?」

「まずね、車いすでも動けるおうちを作るの」

「ふむふむ」

「そしたら、街の中も車いすでも動けるようにするの」

「それでそれで?」

「あとは、びょーいん」

「びょーいん?」

「あたしみたいな子が困らないようなびょーいんを、建てたい」

「……そっかぁ」

「おねーちゃん」

「ん?」

「あたしができなかったら、代わりにお願い」

「……きっと、できるよ」

                            建てるようです 完

[ 2010/09/06 07:06 ] 三国志Z作品 | TB(0) | CM(1)

弟者の顔が兄者になってる
[ 2010/09/09 04:44 ] [ 編集 ]

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